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「……あの、マーク」
「ん~? なんですか、ンンさん」
 ぽかぽかと暖かい日が降り注ぐ草原で、両手両足を放り投げ、う~~ん、と伸びをする。戦争と戦争の合間の、束の間の平和。魔術の勉強をしようと二人で野営地を出て、ここまでやって来た。先日ここいらの屍兵は一層したばかり。当分危険なことはないだろうという、我らが軍師の許可もちゃんともらって。
「マークは、もし記憶が戻ったら……私の傍から、いなくなったりするですか?」
 隣でぼんやりと、広がる景色を見つめていた彼女の口から、ぽつり、と落とすように紡がれた言葉。
「……ええっ?」
 思わず、がばりと勢いよく上体を起こす。その様子と、自分の口から出た言葉に驚いたのか、大きく目を見開いたあと、顔を真っ赤にしてこちらから背けてしまった。
「あ、ご、ごめんなさい! 変なこと、聞いたですよ……」
 どうか忘れてくださいです、とかぶりを振る。ナーガ様へ祈りを捧げる時と同じくらい、縮こまった背中。余程、自分でも意識せずに出た言葉だったのだろう。
「――ンンさん」
 そっと彼女の背中に手を当てて、そのまま彼女の顔を覗き込むように、隣にしゃがみ込んだ。恥かしさのあまり、両手で隠されたその顔は、なんだか泣いているようにも見える。そういえば、『大好きだ』と気持ちをぶつけ合ったあの日から、たびたび二人でいたけれど、時々不意に、彼女は寂しそうな表情を見せることがあった。それは、彼女が亡き両親に想いを馳せる際に見せるものと同じもの。自分が彼女を気になりだした、きっかけの表情。
 それを見たくなくて、笑ってほしくて、奮闘しているうちに、恋に落ちた。けれど、今度は自分がその表情を作り出してしまっていたなんて。
「僕は、ンンさんが大好きです」
「…………」
「ンンさんが悲しむようなことをするやつは、この僕が絶対に許しません。それがもし僕自身だとしたら、僕は僕を絶対に許しません」
「……マーク、」
「僕、ンンさんの笑顔が大好きなんです。ンンさんが笑ってくださるなら、僕、なんだってします。僕が傍にいることでンンさんが笑ってくださるなら、僕はずっと、ンンさんの傍にいます」
 だから、安心してください。そう言うと、ようやく彼女の表情を隠していた天岩戸が開く。真っ赤な顔をして、瞳は涙で滲んでいて、

「私も、マークが、大好きです……!」

 けれどその表情は、大好きな僕の笑顔を映していた。



Love U Madly!








二人の支援会話がかわいすぎて。いつも手を繋いで歩いていてほしい。微笑ましい。
meg (2012年5月31日 14:00)

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