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「ええと、その......。」

 お互いがお互い、脈拍数と心拍数が、とんでもないことになっているということが、容易にわかる。声こそ上ずっているけれど、ものすごく真剣な瞳に、思わずごくりと喉がなる。

 大体予想がついている次の言葉を、今か今かと、待っている。

「や、やっぱり、その......」
「ダメ!は、早く、言ってください......!」

 わたしの心臓が、許容値を超えて、爆発してしまう前に。

「そ、そうか......。じゃ、じゃあ、その......。」

 肩をガシリ、と掴まれる。視線は交錯したまま、外すことができない。手が、唇が、震える。

 じれったい、じれったいけれど、ああ、その先を言わないでほしいと願っているわたしもいる。心の準備は、いつまでたっても出来そうにない。

 でも、早くその先へ進みたい。もっともっと、わたしを貴方でいっぱいに、貴方をわたしでいっぱいに、してほしい!

「もに、か」
「は、はい!」
「そ、その......」

 何度も繰り返される問答に、実際には五分そこらのところを、もう何時間もかけている気がする。喉だってカラカラ、今は真冬のはずなのに、この空間だけ茹だるような暑さ、まるで真夏のよう。蝉の鳴き声だって聞こえてきそうだ。

 ぎゅう、と、肩を掴む手に力が入る。少し、痛い。形の良いその薄い唇が、ゆっくりと動く。


「キス......して、いいか?」


 言った......!!

 一瞬顔を伏せ、答えは返さず、ただそのまま瞼を閉じ再び顔を上げた。それは、もちろん肯定の合図。いくら鈍い彼とはいえ、これくらいは分かってほしい。

 壊れ物に触れるかのように、まずは額に触れ、頬に触れ......ゆっくりと優しいそれは、唇に降りてきた。



You More !!

あなたを、もっと、もっと!



 ただ触れるだけの口づけは、それでもなお何度も何度も、繰り返される。離れるまでの時間が長くなるまで、そう時間はかからなかった。







多分、今後もこんなに短い文章は書かないだろう、そのくらいの短さ。でも濃度はこれまでの最大出力であります。
meg (2012年5月11日 17:11)

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