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「ん……?」
 暖かい日差しが降り注ぐ午後、野営地の一角にある大きな幹を持つ木の裏に座る、二つの影を確認した。薄い紫色の髪を持つ人物と、明るいピンク色の髪を持つ人物は、人の多いこの陣営の中でも数少ない。それにあの後ろ姿は、誰かなんて一目瞭然だった。
(父さんと母さん、何してるんだろ……)
 先ほどからずっと眺めているものの、二人そろって微動だにしない。だが下手に動けば、もれなく父特製の呪いを食らうことになりかねない。けれど、あの恥ずかしがり屋の母さんと、笑い声の絶えない父さんが、あそこまで静かに座っていることには、非常に興味がそそられる。うーん、どうにかして父さんにばれず、二人の様子を前から見ることはできないものか。
「……アズール、いつまでもそんなとこで眺めてると、呪っちゃうよ~?」
 うわっ、と思わず声をあげそうになって、慌てて口をふさいだ。どうしてばれたんだろう、彼は一度もこちらを見ていないのに。
「バレてないと思っているところが、まだまだ甘いね~~」
 と、いつもより声低めに笑う。肩をすくめて降参のポーズ。バレているのなら、もういいだろうと、音を立てずにそちらの方へ歩いていく。母さんは、先ほどから微動だにしない。
「……そういうこと。見せつけてくれるね」
 眠り姫は夢の中。いつも真っ赤な顔をして恥ずかしがる母さんの、こんな無防備な姿は滅多に見られない。時が時なら、自分も彼女を口説く一人となっただろうに。実の母を口説くわけにはいかない。それこそ呪われる程度では済まないだろう。
「さっきまで話してただけなんだけどねー、気が付いたら寝ちゃったみたいだね」
 そう言って、優しく彼女を見る彼の表情も、なかなか見られるものではない。愛おしい者を慈しむような、その視線。手は、しっかりと繋がれている。
「……じゃあ僕は、眠り姫を叩き起こすような無粋な輩が現れないよう、茨となって、見張っておくとするよ」
「大丈夫だよ~、そんな人がいたら呪っちゃうから」
「いや、今この時期に軍のメンバー減らすと、我らが軍師から雷くらうでしょ」
「ああ~、それは怖いね~~」
 静かに、朗らかに笑うマレフィセントは、繋がれていないもう片方の手で、愛しくて仕方がない、そんな表情で、眠り姫の頬をそっと撫でた。


Sleeping Beauty








未クリア時点のSS。親子の支援会話が進んでいない状況で書いたので、アズールの口調を掴み切れていません。
meg (2012年5月24日 17:07)

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