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「岳羽ですけど、起きてますかー?」

 寝ぼけ頭のまま、制服のタイを締めたところで、ドアをノックする音が聞こえた。

「悪いけど入るよー?」
 眠気のあまり反応が追い付かず、いいと答える間もなく、ドアノブが回り、彼女が顔を出した。
 一瞬、立ったまま寝ているんじゃないかと思える自分と、大き目のボストンバッグ以外、何も置かれていない部屋の様子に、驚いたような顔をしたが、「まぁ、昨日来たばかりだもんね。っていうかソレ起きてんの?」と遠慮なくずかずか部屋に入ってくる。

「先輩に、キミを学校まで案内しろって頼まれちゃって。もう出られる?」
「別に、一人でも行けるからいいよ...。」
「あ、断るかな、ふつう...。てかダメ!それだとわたしが先輩に怒られる!」
「どうでもいい...。」
「どうでもよくない!ほら、行くったら行くんだから!!」

 ぐいぐい、と背中を押され、半ば強制的に部屋を出される。「あ、鞄!」と彼女は僕を廊下に放置して、断りもなく部屋へ引き返していった。

(岳羽ゆかり......だっけ。)

 随分、温かい手をしているんだな。背中を押されていた箇所が、まだその熱を帯びているよう。まるで、そこからその手で体内に侵入され、心臓を鷲掴みされる、そんな感覚。
(.........?)
 何考えてるんだ?と頭を振る。そうだ、まだ寝ぼけているに違いない。始業式以外に今日は授業もないんだし、行かなくていいじゃないか。本音を言えば、クラスへ紹介されるという行事すら、面倒くさい。
(......まぁ、)
 短期間の間だけとはいえ、僕のものであるはずの、部屋の扉の奥から、「ちょっとー、キミの鞄どこにあるのーー?」と声が聞こえ、仕方ないかとドアノブに手をかける。
(彼女が行くって言うんだから、仕方ないか...。)

 ガチャリ、と音を立てて回し、扉を開けたそこには、さすがにボストンバッグには手を触れられなかったのだろう、ふくれっ面をした、彼女の姿があった。





Möbius


(そうして、あなたにも)

(終わりのない幸せが、訪れればいい。)





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meg (2012年4月11日 16:21)

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