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「果たしてそれはどうかな」

 自分が入室してきた時点から開け広げられたままとなっていた扉の奥から、一人の巨漢が姿を現した。

「……!」
「イスカンダル!」
 その後ろには、その大きな体に身を隠すように付き従う、よく見知った、小さな魔術師の姿も見えた。話は全て聞かせてもらった、と言い、その足でずかずかと英雄王の元へ歩いていく。
「ギルガメッシュよ、お主がアルトリアに対し牙を剥き出しにしたその瞬間、この征服王の軍勢が迎え撃つものと思え」
 目を見開いた。何故、という言葉が双方の口から漏れる。当の本人は、自慢げにニヤリと笑い、決して背の低くない英雄王を、見下ろした。
「何だと貴様……」
「お主とて英雄王と呼ばれる男。この意味、分からんなどということはあるまい」

 隣国の英雄王、ギルガメッシュ。
 隣国の征服王、イスカンダル。
 我が国の敬愛すべき騎士王、アルトリア。
 三国の王が一堂に会したその場は、言いようのない威圧感に満ち溢れる。その場に圧倒されたのか、魔術師である友人が逃げるように駆け寄ってきた。

 しばらく続けられた睨み合いの末、舌打ちをし視線を逸らしたのは、英雄王だった。

「……感謝するのだな、アルトリア。征服王に免じて、一先ずこの場は引いてやる」
 フン、と鼻を鳴らし、大げさに音を立ててマントを翻し踵を返す。
「だが、努々忘れるでないぞ。我は一度欲した物は、必ず手に入れねば気が済まぬ性質でな。絶望に彩られ過ごす日々を、心待ちにするがよいわ!」
 高々と笑いながら扉より退場していく様を見て、なんだよアイツ、ただの捨て台詞じゃないか……と隣に立ち尽くす友人が呆然と口にする。かくいう自分も、その場に跪いたまま、ただただ呆然としていることしか出来なかった。

 同じようにしばらく呆然と王の後姿を見送っていた女王だが、我に返り、征服王の元へ駆け寄る。
「イスカンダル、貴殿には関係がなければ特に利益のない話のはず……なのに、どうして……!」
 確かに、三国の内二国が戦争状態となれば、その対応を求められることに間違いはない。それには三パターンの選択肢があり、一つは中立を、一つを英雄王の肩を、そして最後の一つは騎士王の肩を持つこと。ニヤリと笑みを見せた後、こちらに居る魔術師の方へ顔をやり、そのまま豪快に笑った。
「なァに、その男は、余の右腕にとって大切な友人だそうだからな」
 こちらにチラリと視線を送る。それを受けて、隣で呆然としていたウェイバーが我に返り、いや、別に、違う!と、視線を彼と自分の間を行ったり来たりさせ、何に対してか分からない反論を始める。
「それに余とて、戦場の華である主らを、下らん理由で手折らせるような真似は好かん」
 そう言って、自身の持つ身長の三分の二程度しかない、目の前の気高き麗しき女王の肩を、叩いた。彼女はぱちくりと瞬きを繰り返し、その後吹きだして、
「感謝する、征服王よ」
 そう、嬉しそうに、笑った。






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meg (2012年9月20日 11:57)
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